狭山関西キャラバン・桜井昌司さん追悼「オレの記念日」神戸上映会
「桜井さんが私の日頃の小さな悩みを吹き飛ばしてくれました」。上映後のブレイクアウトトークで、参加者のこんな感想が聞けて嬉しかった。
僕が桜井さんと出会ったのは、2017年の第二回・狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西の獄友トークセッション。話題は死刑制度におよび、「死刑はその人から世界を奪う」という彼の言葉が耳に残った。個人の中に世界が包含されているという彼の世界観に僕は惹かれた。
「オレの記念日」でも、彼は自分を冤罪に突き落とした警察を「恨んでない」「感謝状を渡したいぐらいだ」と述べている。それは「そう思わなければ生きていけなかった」という程度の思想ではない。
「誰のせいでもないと思うところから精神障害者の自立は始まる」と教えてくれたのは僕の友人であるが、桜井さんの思想もそれに通底するものだと僕は思う。それは自立の思想である。自分によって立つことから自由への道は切り開かれるのだ。
「警察に感謝状を送りたい」と述べた桜井さんは、「冤罪を引き起こした司法関係者を処罰する法律を作るべきだ」と主張し続けた。悪いのは個々の警察官ではない。彼は、違法捜査を是とし、必要としている構造を変えることを求めた。
「刑務所に入ってよかった」「刑務所が今の自分を育ててくれた」と桜井さんは言う。それは「人の善意を心底信じられる」のが冤罪犠牲者だからだという。「自立」といい、「自由」というが、それは自分だけで成り立つものではない。「自立」も「自由」も、人と人との関係によって成立していくものなのである。
参加者21人のささやかな上映会だったが、見知らぬ人たちが映画を観て語り合うような、こんな上映会がしたかった。これからも折に触れて桜井さんのことを語り合い、彼が残した希望を紡いでいきたいと思う。
金聖雄監督に感謝!